ゆっくりと、車輪ががったん!

2022年11月13日 日曜日 

 

待ちに待ってた朝がきた。

8時すぎ

三脚抱えたくのいちさんとあのじは蕨駅で待ち合わせ。

「おはよ!」

「おはよ!」

「お天気崩れなくてよかったね」

余裕を持って出たはずなのに、うろうろしているうちに、集合時刻が迫ってきちゃった💦

ここは、何度かリハ―サルにも使ったところ。

あちこち動き回っているうちに、わらわらスタッフ集まって。

 

そこに現れ出でたるは、わあい、我らが酒井さん!

対面でお会いするのは、なんとまあ2年9か月ぶりのこと。

「お久しぶりです!」

「ご無沙汰してます!」

なんだかほんとに、それだけで泣けてきちゃう。

 

あ、今朝は素敵な女性もご一緒だ。

「フルートの嶺井さんです。今日、僕をサポートしてくれます。」

それは、それは、川口ぞうへようこそ!

ほんとにありがとうございます。

「よろしくお願いします」

穏やかな優しい笑顔とともにご挨拶くださって。

ようし、これでもう、すっかりお仲間になりましたね。

 

8時45分 

ホールの扉が開くや否や、誰に言われるわけでなく、それぞれ自分の役割をきびきびとこなしていく。

階段席一つ置きに用意したマスキングテープで、しるしをつける。

「ここに座ってね」

こんなこと、コロナじゃなければなんも必要ないのにね。

受付は外。テーブルいくつにする?

わのじさんは、けんちゃんのお茶コーナーの準備だね。

 



 

 

モリヤンは、プロジェクターの調整、びんちゃんも、初めてのビデオカメラで悪戦苦闘。機械は2人にお任せするしかないもんね。ホールスタッフと一緒に頑張って!

 

 

 

 

 

そんなこんなの喧騒を物ともせずに、酒井さんと嶺井さんは、一生懸命音合わせ。

聞き覚えのあるぞうのメロディがピアノとフルートで奏でられ、何度もうっとりして手が止まりそう。

だめ、だめ。ここはきっちりお仕事しなきゃ。

 

9時半 

遠藤さんの音出し開始。皆さん、会場入るの、も少し待っててね。

9時40分

 漸く準備も整って、一番乗りはだれかしら?

みんな、ほんとに待ってたんだね。ニッコニコの笑顔です。

10時 

予定通り、しばやんの司会で幕が開けました。

 

 

 

まずは、あのじからのご挨拶。

 

 

 

「今日は、本当にゆっくりではありますが、私たちが確実に少しずつ歩みを進めていることをご一緒に確認し、これからのステップにつながるようなそんな時間になることを願って企画しました。

一番初めは、今から31年前、第1回目の公演のビデオを皆さんに見ていただきましょう。こあでも川口ぞうの歴史をお伝えしていますが、とにかくもう何も分からず勢いだけのコンサートでした。」

 

この初演のビデオ、短い時間で何を伝えるか、お見せしたかったことはたくさんあったけれど、断腸の思いで15分に縮めて。

伝説となったリリアから川口駅改札口までのお客様の列、元上野動物園園長の中川志郎さんのお話、緞帳が開いた途端、ステージの上と客席双方からあがったどよめき、最後の11番で挿入した世代を超えた5人のメッセージ。

 

 

ところどころ、解説を加えていきましたが、多くの参加者からは、中川さんの話もメッセージに込められた思いも、全く古びることなく、今この時と大きく重なって、より実感を伴ったとの感想をもらいました。

「初演に参加した人、手を挙げて」と言ったら、子どものときに歌ったK君が子どもを抱っこして手を挙げてくれて、ほかにも何人も手が挙がって、そっか、みんな30年の時を重ねてここに集まっているんだなあと、ほろっ。

 

次は、「えんどうさん、聴かせて」のコーナーです。

 

 

 



遠藤さんは、コロナ禍の中で、演奏活動が遮断してしまい、本当に苦しい思いをしてこられたことを静かに話され、今もウクライナをはじめ多くのところで戦火が止まない中で、一日も早く平和な日が訪れることを願って、ラヴェルの「水の戯れ」とショパンの「英雄ポロネーズ」の2曲披露して下さいました。

さまざまに形を変える水の流れが何とも心地よく、また力強い「英雄ポロネーズ」からは、平和を願う思いが強く伝わってきて、私たちの心を奮い立たせてくれるようでした。

 

さて、いよいよ酒井さんの登場だ。

あ、ちょっと待って。その前に皆さんスクリーンにご注目!

映し出されたのは、酒井さんが1995年から2001年にかけて4回にわたって指揮をして下さったときの、秘蔵お宝映像。

ほら、見て、見て!

ちょっぴり体形はお変わりになったようですが、あの頃の情熱的な指揮は今もなお変わることがなく、さらに円熟味を増していることが伝わってきましたね。

あ、いっけない。ここでこんなこと遊んでちゃ、時間が足りなくなっちゃう。

はい、ここで本物の酒井さんに登場いただきましょう。

 

 

 

「皆さん、ほんとうにお久しぶりです」から始まった酒井さんのご挨拶。

やっと会えた…酒井さんの声を聞いた瞬間に、もう涙ぐんでいる人がいます。

酒井さんにお願いした時間は、わずか40分。

その時間で、久しぶりに会う皆さんに、どうやったら音楽の楽しさ、ぞうを歌うことの楽しさを伝えられるのか、随分と酒井さんは悩まれたようです。

そしてなんと、この日のために、フルートさんにサポートをお願いし、ご自身は7年ぶりにピアノの前に座り、練習されたそうな。

 

「皆さん、ちょっとずつ席を移動してください。少しずつ離れれば、合唱練習の際に藝大で運用しているルール通りですから、マスクをして小さな声で歌えます」

 

わあい、歌えるんだ!

 

 

酒井さんが選んだのは、この3曲。

まずは、かわいいイントロが聞こえてきました。あ、9番だ!

「♪ぞうをかしてください(だれに)」

(だれに)って、歌詞にはないのに、自然に口をついて出てきます。「そうです、誰にお願いするんだっけ?」

「♪ぞうをまだみたことのない」の「ぞうを」と歌う時は、どうするの?

あ、紙飛行機をふっと飛ばすように歌うんだったよね。

 

音と一緒に、少しずつ記憶がよみがえってきます。

 

そして7番、11番と続きました。

 

 

アドンとキーコがいのちを閉じ、生き残ったマカニー、エルド、そのぞうさんたち一頭一頭の名前に込められた想いをどう伝えていくのか、おのずと今の世の中に重なって、歌う私たちに問いかけてきます。

 

「人間のいのち、動物のいのち、いのちと歌う時は、いの音からきゅうっとタオルをしぼるように!」

「本当の練習が始まったら、容赦しませんよ~(笑)」

「はあい!」

酒井さんがピアノで伴奏し「こんな風にみんなに歌ってほしいな」とフルートさんに託したメッセージ、しっかり伝わってきましたよ~!
 なんちゃって、伝わっても、それが表現できなきゃいけませんね。

久しぶりに歌うんだもの、どうしたって、もごもごしちゃったけれど、でももう、歌えたことだけで、心の中が明るく膨らんでいくようでした。

 

さて、時間も終わりに近づいてきました。

「どうしましょう。大丈夫ですか?やりますか?」

「はい、やりましょう!」

 

よおっし、10番、歌うぞう! 

「じゃあ、もう少し間を開けましょう。2列目と4列目はこっちに移動して」

遠藤さんの伴奏が始まると、子ども達の目がらんらんと輝いてきました。おとなだって負けてはいません。

酒井さんの指揮、遠藤さんのピアノ、嶺井さんのフルートに促され、涙と笑顔が混ざり合って歌ったこの日の10番、きっと誰もが忘れることのできない思い出として、これからもずっと心の奥深くに生き続け、川口ぞうの背中を押していってくれるに違いありません。

 

 

 

 

「何よりも『団員のいのち』を最優先にしながら、川口ぞうの車輪はゆっくりと動き出しました。

この列車、これまでは、都度コンサートの本番日程を決め、逆算して練習を組み立てて団員を募り、特別仕立ての臨時列車として走らせてきましたが、コロナ禍が未だ収束を見せない中で、走らせ方を大きく変えていくことにしました。

来年の3月からは、いつものように第2第4日曜の午前、いつもの場所で、十分に注意を払いながら、ゆっくりと練習を開始していきます。

もちろん、『本番』となる終点の駅に向かっていくことには変わりませんが、すでに確保している来年の7月23日埼玉会館が、私たちのめざす『本番』となるためには、超えなければいけないハードルがたくさんあります。

仮に7月23日の企画が従来のような満員のお客様をお迎えしての『本番』のイメージとは違うものであっても、それはあくまでも乗り継ぎ駅であり、さらにその先に向かって走っていくためのステップの場所と捉えて、まずは3月からの練習をうんと楽しんでいきたいと思います。」

 

おしまいに、そんなことをスタッフからの提案としてお伝えし、参加された皆さんからは温かな拍手が送られました。

こうして、「さかいさんといっしょ」は、参加された皆さんの溢れ出た想いと共に、明るく幕を閉じました。

さてその3月ですが、またぞろ第8波などとも言ってますし、一体全体、世の中はどんな状況になってるでしょう。

でもね、皆さん、また会える日まで、コロナなんかにゃ負けないで、明るく元気に過ごしましょうね。

 

待ってるぞう~~‼

 

Text by あのじ

 

 

 

 

Photo by まのじ

 

  • 追伸

「ああ、ここにきて、みんなの顔をみたら、ホッとした~。ここはいいわあ」

「もう、歌詞も忘れてるし、音もとれなくて全然歌えなかったけど、久しぶりに声を出せて楽しかった。やっぱり歌っていいねえ」

 

参加された方からは、いろんな声が聞こえて、そのどれもが嬉しかったけど、ああ、やっぱり川口ぞうは「ここにくればあえるね」がずっと生きてる場所だったんだねと、スタッフ一同シミジミ。